セラミックス冠の種類と費用について

近年セラミックスの進歩はすさまじく、この数年の間にたくさんの種類のセラミックス冠が誕生いたしました。
当院ではそれぞれの特徴を理解いただいた上で、患者様おひとりおひとりに最も適したセラミックス冠を提供いたします。

セラミックスの種類

セラミックスの種類

1 メタルボンド ( フレームにメタルを使用 )
2 オールセラミックス冠 ( フレームはアルミナやジルコニア メタルは使用しない )

 

1 メタルボンド

10年前まではセラミックス冠といえば90%以上がメタルボンドでした

   

正面から2本目(両側)がメタルボンドです

メタルボンドは、フレームに金属を使い、その表面にセラミックスを覆った(焼き付けた)ものです

メタルボンドの時代は30年以上続いたので、今、世の中に出回っているセラミックス冠はほとんどがメタルボンドだと思います

そのころにも,オールセラミックス冠はありましたが、割れやすく実用的ではありませんでした

2 オールセラミックス冠

e-max(イーマックス:正式名称 IPSe.maxPress)

最近注目を集めるe-max(イーマックス正式名称IPSe.maxPress)は、
使いやすく、人気のあるセラミックスです

   

加工が容易な二ケイ酸リチウムガラスセラミックスを溶かしたあと、強圧でプレスして作成します
従来のセラミックスとは、全く異なった作成方法で作られます

プロセラ(アルミナ フレーム)

プロセラはノーベルバイオケアー社の商標登録です
正面の前歯、向かって左側がプロセラです

  

初期のプロセラはアルミナのフレームにセラミックスを焼き付けたもので耐久性があります

現在は、ジルコニアをベースとしたプロセラも普及しています

ジルコニア

①ジルコニア・セラミックス冠
アルミナの代わりにジルコニアのフレームにセラミックスを焼き付けたものです

ジルコニア白色ですが、金属に似た組成をもち、強度、耐久性に優れています

ジルコニアのベース部分

セラミックスを盛り足して完成したジルコニア・セラミックス冠

②オールジルコニアクラウン
※現在当院では取り扱いがありません

ジルコニアだけでも冠を作ることも出来ますが(オールジルコニアクラウン)
少し硬すぎる点と、色や形を精密に作ることが困難です

ジルコニアは,抜群の硬さと強度を持つため、破折の心配はないのですが、あまりの硬いので、治療のしやすさや、噛みごこちに問題があります

セラミックスの選択基準

それでは、どのセラミックス冠を選択すればよいのでしょうか

ポイントは耐久性(強さ)と審美性(美しさ)と費用です

それぞれの特徴をまとめたのが、以下の表です

<td “>★★

★★★

メタル
ボンド
アルミナ
プロセラ(アルミナ)
ジルコニア e.max 参考)
ゴールド冠
ジルコニア・セラミッス オールジルコニア
フレーム材質 メタル アルミナ ジルコニア ジルコニア 二ケイ酸リチウムガラス メタル
表面材質 セラミックス セラミックス セラミックス
硬さ 普通 硬い 硬い 硬すぎる 普通 最良
耐久性 ★★ ★★★ ★★★ ★★★ ★★★ ★★★
審美性 ★★★ ★★★ ★★★ ★★★
審美性の特徴 メタル使用で、歯肉の変色あり 最も美しく仕上がります 最も美しく仕上がります 選択は3色のみ 透明感や深みのある色は苦手 ゴールド色です
適応場所 前歯
奥歯
前歯
奥歯
前歯
奥歯
奥歯 前歯
奥歯
奥歯
ブリッジ 一部可 一部可 前歯のみ
一部可
費用※ 80,000 100,000 100,000 現在扱って
おりません
75,000

65,000

利点 実績のある、優秀な治療法です 今あるセラミックスの中では、最もキレイです 審美性ではプロセラとほぼ同程度で、ブリッジも可能です 経済性 柔軟性のある材質で、噛み合わせも良好です 噛み合わせ、加工性、耐久性共に優秀な材質です
欠点 メタルを素養しているのが唯一の欠点です 強い力が加わると、セラミックス部分が割れることがあります ベースのジルコニアは硬すぎて、時として治療が困難です 硬すぎるため、噛み合わせの調整が困難
色や形はあまり良くありません
微妙な形や色調を再現しにくい場合があります メタル色は最近は好まれません

※費用は税別です

セラミックスの耐久性について

メタルボンドは、メタルをフレームとしてセラミックスを盛って作りますが、

プロセラはそのフレームがアルミナにジルコニア・セラミックス冠はジルコニアに、なったものです

図1はジルコニアの図ですので、フレームは ジルコニアですが、メタルボンドやプロセラについても、

フレームをそれぞれの材質に置き換えてお考え下さい

いずれにしても、フレームは変わりますが、表面はセラミックスです。

図1

図2

一方、図2では、冠全体が二ケイ酸リチウムガラスセラミックスで出来ていることがおわかりになると思います。ゴールド冠では、これがゴールドになったとお考え下さい

さて、ジルコニアは1000MPa(メガパスカル応力、圧力の単位)という、強い力に耐えられるという事が示されていますが、その表面に盛られているセラミックスは80~120MPaの力にしか耐えることが出来ません(コレでもかなり強い 耐久性ですが)一方図2のe.maxに使用されている二ケイ酸リチウムガラスセラミックスは,400MPaの力に耐えることが出来ます

従って、e.maxの方が、、メタルボンド、プロセラやジルコニアより、耐久性が強いと考えられています。

さて,オールジルコニアはどうでしょうか。
オールジルコニアは全体がジルコニアでできているため、1000MPaの力に耐えられると考えられるので、大変耐久性に優れた材質ではありますが、あまりにも硬すぎて、加工や治療がしにくい事と、コレが大切なのですが、硬すぎて、噛み合わせになじみにくい点が不安視されています。
実際には、あまり強い力が加わらないように,慎重な噛み合わせの調整が必要です

 

この記事の筆者

長谷川 亨(はせがわ とおる)  歯科医師  博士(歯学) 
1959年 愛知県名古屋市生まれ。 愛知学院大歯学部歯学科卒業。
スカイル福与歯科等研修をへて1988年長谷川亨歯科クリニック開院
現在 同クリニック院長 (有)長谷川ビル 代表取締役
論文
・歯周炎患者歯肉の電子顕微鏡的研究 ―固有層の炎症層の特徴について― 愛院学院大学歯学会誌
・実験的歯の移動に伴う歯槽骨骨改造活性の動的把握の試み ―鉛生体染色法を用いて― 松本歯学
・ヒト歯肉組織の肥満細胞 免疫組織科学的研究 松本歯学 他