JAO 30周年記念講演会

2025年12月14日研修会・講習会

JAO(日本オッセオインテグレーション・アカデミー)の30周年記念講演が、11月30日、名古屋ガーデンパレスホテルにて開催されました。

講師には、岩田健夫先生(東京都開業/デンタルヘルスアソシエート代表)をお招きし、「今、そしてこれからの歯科治療を考える:成功の秘訣とは」をテーマにご講演いただきました。

講演の冒頭では、岩田先生が2023年に上梓された『咬合・補綴の臨床マスター 歯科ほど良い仕事はない』(デンタルダイヤモンド社)でも触れられている、歯科医師という仕事の魅力について、また歯科医として成功するための「三つの秘訣」についてお話しいただきました。
続いて、歯科領域においてもグローバルスタンダード(世界基準)の考え方が不可欠であること、治療で失敗しないための「予知性の判定基準」について解説がありました。さらに、先生のご専門である咬合治療において遵守すべき「基本原則」と、日常臨床で活用すべき臨床咬合像についても詳しくご講演いただきました。

40年を超える先生の臨床経験の集大成ともいえる内容で、非常に聴き応えのある一日講習となりました。

熊谷崇先生の講演会に参加して

2025年11月9日研修会・講習会

10月29日、熊谷崇先生の講演会に参加しました。会場は東京・銀座のデンツプライシロナ株式会社ショールームでした。先生はご高齢のため、現在は一般向けの講演会を控えておられると伺っていましたが、東京勤務の知人からの情報で半年前に申し込み、このたび念願叶って受講することができました。

熊谷先生のご講演はこれまでにも何度か拝聴していますが、一般講演としては約10年ぶりでした。今回も2時間半にわたり休憩なしでお話しされ、その熱量とエネルギーは以前とまったく変わらず、深い感銘を受けました。

名古屋 中区 長谷川亨・歯科クリニック 予防歯科 虫歯予防

思えば私がまだ20代、開業前にアメリカの臨床現場を学ぼうとシアトル(ワシントン州)に約1か月滞在し、その後ペンシルベニア大学で研修を受けた頃のことです。すでに当時から熊谷先生は、独自の予防歯科医療の礎を築くため、アメリカや北欧の研究者たちと積極的に議論を交わしておられました。その情熱的な姿が今も印象に残っています。今回の講演でも、Edwin S. Rosenberg 博士(ペンシルベニア大学)、Roy C. Page 博士(ワシントン大学)、Per Axelsson 博士といった往年の名だたる研究者のお名前を懐かしく拝聴しました。

「名医とは、高度な治療技術を持つ歯科医ではなく、患者さんが治療を必要としないよう導ける歯科医である」――この言葉は、私が開業時に目指した理念と重なります。しかし実際にそれを形にするには、医学的な課題のみならず、社会制度的な障壁も数多く存在します。熊谷先生はそれら一つひとつに果敢に挑み、確実に成果を積み上げてこられた稀有な存在です。その歩みは、NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」や「カンブリア宮殿」「未来世紀ジパング」などでも紹介され、社会的にも大きな反響を呼びました。

名医の作った入れ歯で何でも噛めることは素晴らしいですが、自分の歯で噛める喜びには及びません。これは禅語にある「瘡(かさ)・疥(かいせん)を掻く快は、無病の安楽に及ばず(かゆい所を掻くと一時は快いが、“かゆみがない健やかな状態の安らかさ”の方が本質的に優れている)」という言葉を思い起こさせます。どれほど優れた入れ歯やインプラント治療であっても、生まれ持った健康な歯に勝るものはないのです。

この考え方は、埼玉県上尾市で開業されている飯塚哲夫先生の診療姿勢にも通じます。飯塚先生は、虫歯や歯周病を初期の段階で徹底的に治療し、再発を防ぐための口腔衛生管理を徹底されています。数十年にわたり近代口腔科学研究会を主宰し、歯科医療の本質を探求し続けておられる姿勢に、深く共感します。

酒田市における熊谷先生の50年に及ぶ取り組みはまさに驚異的です。2017年の公開資料によると、当時人口約10万5千人のうち約3割が受診し、1割以上が定期メインテナンスに通うとのことでした。さらに今回の講演では、酒田市民の約半数が日吉歯科を訪れているとのお話がありました。
同院の解析では、定期メインテナンスを受ける12歳児のカリエスフリー率が90%以上に達し、5歳から通う子どもでは20歳になっても約9割が虫歯ゼロとのことです。成人においても、長期メンテナンス継続者の75歳時点での平均残存歯数が18本(全国平均は約8本)という結果が示されています。

また、ボー・グラッセ先生(スウェーデン)が提唱した「メディカルトリートメントモデル(MTM)」を基に、検査値や画像をクラウドで患者と共有するシステムや治療プログラムの運用など、実際の診療の工夫についても多くの学びがありました。

最後に、テレビ番組「カンブリア宮殿」で村上龍氏が「良い予防歯科を見つけるには?」と尋ねた際、熊谷先生は次のように答えておられました。
「規格性のある写真、レントゲン、唾液検査、歯周病検査などを通じて、自分の口の中をきちんと理解できるようにしてくれる歯科医院なら、自分の口の“過去・現在・未来”を知ることができます。」
この言葉は、予防歯科医療の本質を的確に示しており、私自身の診療理念とも深く響き合うものでした。

研修会「再生医療とインプラント治療」

2024年11月30日研修会・講習会

JAO(日本オッセオインテグレーションアカデミー)の例会に参加してまいりました。
「実用化の進む再生医療とインプラント治療」がテーマで、講師に岐阜大学大学院医学系研究科 感覚運動医学講座 口腔外科学分野の山田陽一教授によるセミナーでした。再生医療の基礎から最新の臨床応用に至るまでを幅広くご講演いただきました。

再生医療は、1つの受精卵から約40兆個の細胞へ成長する仕組みを応用した医療技術で、1993年に提唱された「Tissue Engineering」の概念や2006年のiPS細胞発見を契機に注目を集め、臨床応用が進んでいます。歯科領域は再生医療の応用が進んだ分野の一つで、GBR法やGTR法を用いた歯周病治療やインプラントの骨造成、不要歯の歯髄幹細胞を活用した骨再生研究が進行中です。
また、歯髄炎や根尖性歯周炎に対する治療は既に実用化されているとのことで、実際の症例報告もされておりました。さらに、デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展により、インプラント治療や顎顔面補綴治療でも新たな可能性が広がっており、講演後の質疑応答では、再生医療の安全性や将来性に関する議論が活発に行われ、具体的なデータを交えた解説を頂きました。
今回のセミナーを通じ、再生医療の進化と歯科領域での実用化が着実に進んでいる現状が実感されました。

歯の接着についての研修会

2024年9月29日研修会・講習会

7月20日、7月定例研修会が鷲野崇先生(わしの歯科クリニック 名古屋市)をお招きして、ソフィアインプラントセンター開催されました。鷲野先生は、今年3月の例会に続いてのご講演です。

鷲野先生は接着歯学をご専門とされており、3月の例会ではコンポジットレジンによる直接修復(小さな虫歯治療)をメインに、今回の例会では、各種セラミックス、ジルコニア、ハイブリッドレジンによるCAD/CAM冠など、さまざまなマテリアルに対する接着法(クラウンなど被せ物の接着方法)についてご講演いただきました。コンポジット修復やセラミックス冠の装着は、日常の歯科臨床で最も頻繁に行われる治療内容ですが、それらの接着修復をいかに長期的な成功に導くかについて、さまざまな実験や研究に基づいたテクニックをご紹介いただきました。

最近、詰め物や被せ物がはずれる頻度は少なくなってきましたが、その元にあるのは、接着材料の進歩とそれを日々扱う歯科医のちょっとした心がけと手間であることを実感させられる講習会でした。

 

 

口腔外科 全身管理についての講習会

2023年11月11日研修会・講習会

9月10日(日)に開催された令和5年のJAO特別講演会に参加いたしました。

講師は小谷順一郎先生(大阪歯科大学歯科麻酔学講座名誉教授)で、講演のテーマは
「明日の歯科インプラント医療に必要な手術時の全身管理-知らぬが仏になっていないか?」でした。

小谷順一郎先生は麻酔学を専門としており、
現在多くの個人開業歯科医院で歯科麻酔科医としてのサポートを行っています。

その経験から、「知らぬが仏になっていないか?」の演題にある通り、
臨床家にとって馴染みの薄い、または見落としがちな
 
①歯科インプラント手術の全身管理、鎮静法の応用と問題点、
②重大な偶発症であるアナフィラキシーの病態、診断、歯科医院での初期対応、他の偶発症との区別方法、
③インプラント手術後の下歯槽神経やオトガイ神経障害など、についてご講演いただきました。

当院では、手術中の患者さんのモニター方法や、準備してあるとはいえ、
アナフィラキシーショック時にスムーズに対応できるよう体制を整えたいと感じました。