日本臨床歯周病学会 第31回年次大会に参加しました(2)

2013年6月18日学会, 歯のコラム

前回に引き続き 学会参加報告のです。

専門的で読みにくいところはテキトーに読み飛ばして下さいね(笑)

ココから少し専門的です  ↓
 

最近問題視されている、インプラント周囲炎についての講演がありました。
九州の松井孝道先生の 「インプラント周囲組織の長期安定を目指して 」です。

インプラント周囲炎は、普通の歯(天然歯)で歯周病が発症するのと同じように、人工歯根であるインプラント周囲の歯肉や歯槽骨に起こる炎症疾患のことです。

以前は、インプラント周囲には炎症は起こりにくいと言われていましたが、インプラントの普及に伴い、インプラント周囲炎がクローズアップされてきました。インプラント周囲炎はインプラントの長期安定を妨げる為、歯科医にとっても患者さんにとっても重要な問題です。

インプラント周囲炎治療の基本は露出インプラント表面のDecontamination(除染)です。
その手法は以下の通り

1. 機械的清掃

エアースケーラでの表面除染はNG。(電位差によりインプラント体が腐食しやすくなる 鉄Fe元素が表面に残留するため)
カーバイドバーでの研磨もNG (タングステンが残る)
ステンレスバー  チタンバーもNG  (いずれも表層に異種元素が残る)
準チタンの超音波スケーラーならOK 異種元素残らない
純チタン性の球キュレットならOK

2. 光殺菌治療  非浸襲性で副作用がない点で有用

3. Air Abretion法(強圧でパウダーを吹き付け清掃します)
重炭酸ナトリウムによるものではシリカが残留し、アミノ酸パウダー(グリシン)では充分な清掃性が期待できず、β-tcp パウダーが有効である
 
4. Er-YAGレーザー 有効であるが 360度均等に当てるにはテクニックが必要 

光殺菌治療 とAir Abrasion(β-tcp パウダー)の併用療法を推奨されていました

インプラント表面性状について
anodized surface や HA(ハイドロキシアパタイト)コーティングのものは、一旦露出するとバクテリアの温床となるため、インプラント周囲炎の観点から言えば、避けた方が良いとの見解でした。

他 トピックスとして、

市販の歯磨き剤 「クリアクリーン」 は炭酸カルシウムの顆粒(大きめ)が歯周ポケット内に入り込み害性があるとのこと

チタンの溶出、腐食は深刻な問題です。
高濃度フッ素 (フローデンなどの塗布剤)が深く関与しているとのこと。洗口薬のミラノールは低濃度のためOKです。
コンクールGelCoat も高濃度フッ化物を含有し問題あり。つまり、インプラント周囲にフッ化物のPMTCは禁忌です。

天然歯用の洗浄剤をインプラントの洗浄に準用するのは、危険を伴う事もあります。こういった情報を得て、日常の治療に生かすことの大切さを実感しました。

さて・・・・

固い話はこれくらいにして・・・・・

学会後は懇親会があるのですが・・・・

それは華麗にスルーして・・・・・

札幌ということで、お約束のサッポロビール園に行って参りました。

900人以上収容の巨大なビール園で、生ビールとジンギスカン(おいしい!)を堪能してきました。

写真bi-ruenn

また折を見て、他の学会の報告もさせていただきます。

日本臨床歯周病学会 第31回年次大会に参加しました(1)

2013年6月18日学会, 歯のコラム

去る6/15(土)16(日) に日本臨床歯周病学会 第31回年次大会に行って参りました。

札幌コンベンションセンターで行われ、
今年のテーマは 「ペリオドンティストが歯を守る~Wes save teeth」でした。
ちなみに ペリオドンティスト とは、一般的に歯周病専門医を表します。

学会00

この学会は、臨床的なテーマがメインですので、いつも学ぶことが多いのですが、今年は2日目の
「アジスロマイシンを用いた抗菌療法によるインフェクションコントロール」五味一博先生(鶴見大学)のご講演が勉強になりました。

アジスロマイシンは 「ジスロマック」 の商標名(ファイザー社)で、歯科でも頻用される薬です。
効果が強力であるからといって、漫然と処方せず、その特性にそった使用をする必要があるという内容です。

アジスロマイシンの特徴である、病原菌の元に選択的に移動する、いわゆるファゴサイト・デリバリーについては、知っていたのですが、

  ファゴサイト・デリバリー :
  食細胞(好中球)内のリソゾームに取り込まれた高濃度のアジスロマイシンは、炎症部
  (歯周ポケット内縁上皮)に移行し細菌に対し効力を発揮する。それにより、強力かつ
  持続的抗菌力(7日間から長いと14日間)を現す。

タンパク形成抑制作用により、バイオフィルムを破壊する働きがある点(歯周病で効果を発揮する決め手となっています)や、アジスロマイシンを使用するタイミングやポイントについて、明確に示してもらえたのは有意義でした。

  アジスロマイシンを使用するタイミング :
  歯周初期治療終了後、基本治療 のフルマウスSRPの際、TBI SCで反応がよくないとき処方する。

さらに日本人は処方された薬をきちんと服用する人の割合が30%と低いという調査結果があることから(健康保険の弊害?)通常のジスロマック錠より、ジスロマックSR(シロップ)の方が効果的であること

また、ジスロマックで おなかをこわす理由は、 アジスロマイシンの分子構造が、腸の蠕動(ぜんどう)運動を亢進させるモチリンという酵素の構造と類似していることによるためで、腸内細菌が変化するためではない点。そしてそれを予防するにはセレキノン(蠕動運動抑制剤錠)が有効である、などの内容でした。

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去年に引き続き、saoriさんとrisaさんも 歯科衛生士セッションに学会参加していただきました。

(続く)

週間ダイアモンド 歯科特集について(1)

2013年6月14日歯のコラム

週間ダイアモンド 6月16日(2013)に「もうダマされない 歯医者の裏側」という特集記事が掲載されました。
新聞広告で見て、早速読んでみました。

週間ダイアモンド

一言で言えば・・・よく調べられた、良い内容でした。
(もちろん疑問に感じるところも随所に見受けられましたが、概してということです)

実際に臨床(治療)を行っている歯科医師でしか知り得ない内容も多く含まれているので、
たくさんの歯科医に取材を行った上での記事であることから、ジャーナリズムの公平性を
鑑みれば、ほかで多く見られる興味本位の 「歯医者へのバッシング記事」 とは一線を
画していると思います。

内容は、この特集を読めば、現在の歯科界の状況から最新治療まで一通り理解できる、
読み応え(よみごたえ)のあるものになっています。

歯科医師数の過剰から歯科医院の経営悪化(歯医者の泥沼)状態になり、患者争奪の
ための値下げ合戦が起こる。その治療費のカラクリ(保険治療、ホワイトニングやインプ
ラントなどの自費治療)からはじまり、患者トラブルが多発しているインプラント治療の現状、
歯医者の選別法、そして新しい歯科医療技術の評価や予防方法、さらには歯科医師や
歯科大学の将来(記事では「末路」と表現されてマス)に至るまで、幅広く歯科のトピックス
を網羅しています。

患者さんが正しい知識を持ち、適切な治療を受けることはとても大切です。
数回にわたって、この記事を元に当院(長谷川亨歯科クリニック)の診療内容や私の考え
について、述べさせていただきたいと思います。

yukaさんの結婚披露宴

2013年6月1日ブログ

おめでたい報告です。

当院のニューフェイス(・・・といっても もう8ヶ月くらいたちましたが)yukaさんが、めでたくご結婚されました。

院長の私も、お招きいただいたので、結婚式と披露宴、行ってまいりました。

ちなみに、私は結婚式が大好きです。

何やら 幸せな気持ちになれるから・・・

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う~ん、 若いお二人だけあって、初々しい結婚式でした。
純白のウエディングドレスもステキです。

yukaさんには、結婚後も引き続き ご勤務いただいています。

どうぞ いつまでもお幸せに。

JAO 5月特別例会

2013年5月31日歯のコラム

5月26日(日曜日) 私が所属しているJAO 日本オッセオインテグレーションアカデミーの、5月特別講演会がありました。

(会場は名古屋市中区の(株)シロナ 会議室)

テーマは 「顎位を語る」 

そして講師としてお招きしたのは
 
池田 和己 先生 (東京都ヒルサイドビュー矯正歯科院長, Roth/Williams Internatiinalセミナー主催) 

酒井 優 先生(愛知県 酒井矯正歯科 院長) 

のお二人です。

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「顎位」とは 、顎の位置であり、噛み合わせの位置の事です。

歯の治療では顎位を定めることがとても大切で、たくさんの理論や技術が研究され、また日頃の治療でも語られているのですが、顎位は左右の顎の関節(顎関節)を支点に、筋肉によってサポートされ3次元的に運動するため、なかなか理論通りにはいかないのが現実です。

顎位についてはたくさんの理論(咬合理論)がありながらも、理論と臨床の一致が困難なところが臨床家にとっては悩ましく、最近では顎位を語ることが、敬遠される傾向すら見うけられます。

かくいう私(長谷川)も、あまり顎位を厳密にとらえることなく、、患者さんの個々の日常で自然に行われている顎の運動を基準として、噛み合わせを決めることが多いです。

しかし今回の講師の池田先生と酒井先生は、矯正専門医でありながら(通常 顎位の研究は 補綴学:歯を作るする分野 で取り扱われる事が多いのです)CTを使用し、視覚的に正しい顎位をモニターしながら、歯を動かし、正しい噛み合わせを作っていという、難易度の高い治療にチャレンジし、すばらしい治療結果を導き出しています。

顎が正しい位置にあり、ズレが無いと言うことは,審美的(見た目)にも美しいと言うことです。ご提供いただいた症例で、治療を終了した患者さんは、どなたも美しく、幸せな表情をされていました。

歯列矯正については私は門外漢ですが、顎位(顎の位置)も歯列不正も・・・当然ですが・・・深く有機的に関連していることが実感されたとともに、毎日の臨床においても、もっと多角的な視点から、治療に取り組まねばと、深く考えさせられたとても良いセミナーでした。

今回は、少し専門的でスミマセン。